2013年4月18日木曜日

我が家の食卓(우리집 밥상)


 以前のコラム(風土47)では、主にお店で供される「庶民のたべもの」を紹介してきました。
 しかし、韓国でも庶民の味は家庭の日常料理が中心です。そこで、これからしばらくは我が家の日常的な食卓を取り上げ、韓国人が普段どのようなものを食べているのかを紹介していきたいと思います。

 話が少しそれますが、昔の食卓にはバンチャン(おかず)の数によって、3チョプ、5チョプ、7チョプなどという形式があり、一般庶民は3チョプ、ヤンバン(支配階級)は5チョプまたは7チョプというしきたりがありました。
 庶民の食卓はご飯とスープにおかずが3種類なので、日本風にいうと一汁三菜ということになりますね。
 もちろん、いまではこんなしきたりも廃れ、それぞれの家庭毎に自由な献立が食卓に並ぶようになりました。

 さて、それでは我が家のある日の食卓を見てみましょう。

ある日の我が家の食卓です

 まずはご飯です。今日は黒豆と麦を混ぜたご飯を作りました。韓国人は伝統的に健康食を好むので、このように雑穀を加える家庭が多いのです。
 スープは味噌チゲです。昆布と干し鰯、唐辛子の種などで取ったダシに、お味噌、乾燥しておいた大根の葉、豆腐、タマネギを入れて10分ほど煮ます。

黒豆と麦入りのご飯
味噌チゲ

 バンチャンは、塩漬けの太刀魚焼き、ゴマ油と塩で焼いた海苔、イワシのシラスにクルミとアーモンドを加え、醤油と水飴で味付けした炒めもの、塩、醤油、おろしニンニク、ゴマ油で和えたホウレン草、大根の葉のキムチ、メシルチャンアチ(梅の漬物)と全部で六種類となりました。
 白菜キムチがないことに少し驚いた方もいると思いますが、我が家ではバンチャンが十分だと思う時や毎日食べつけて少し休みがほしい時は大根の葉のキムチなど他の種類のキムチにします。

塩漬けの太刀魚焼き
ゴマ油と塩で味付けした焼き海苔
イワシのシラスを使った炒めもの

 バンチャンが多いと手間が掛かっていそうに見えますが、実際に食事の直前に作ったのは太刀魚焼きとホウレン草の和えものだけで、他のバンチャンは保存食として作り置いてあるものです。

ホウレン草の和えもの
大根の葉のキムチ
メシルチャンアチ(梅の漬物)

 今回のバンチャンの中で日本のみなさんにはあまりお馴染みでないのがメシルチャンアチでしょう。
 メシルチャンアチは、梅エキスを作る時に残る梅を利用した漬物です。梅エキスは梅と黒砂糖を1:1の割合で混ぜて一ヶ月以上熟成させて作ります。ここから取り出した梅の実をコチュジャンやニンニク、ゴマ油、煎りゴマ、塩などを加えて混ぜ合わせたのがメシルチャンアチです。
 ちなみに、梅エキスは冷たい水で割ると飲みやくて健康にも良く、甘じょっぱい梅の香りがしてとてもおいしいものです。このエキスを調理の時に砂糖の代わりに使うこともあります。

 では、次回の我が家の食卓をお楽しみに…

2013年4月2日火曜日

ウロンテンジャンチゲ(우렁 된장찌게)


 前回のブログでは、大きな市場と庶民的な食堂が多いソウル市の鍾路(ジョンロ)5街にあるお店を取り上げましたが、今回は1.5キロメートルほど離れた鍾路1街と2街エリアで見付けたお店を紹介します。

 鍾路1街と2街は語学校や旅行エージェントが集まっており、いつも若者で賑わっています。また、若い人の好みに合わせたおしゃれで素敵なレストランや、お酒と一緒に楽しむ料理を主としたお店が建ち並んでいます。

お店の外観

 そんな華やかな大通りから一ブロック入ったところに、トゥッペギチプ(土鍋家という意味)という名前の定食屋を見つけました。周辺の現代的なレストランとは違い、ぱっとしない外観ですが、お昼時にサラリーマンやOL達の行列がお店の外にまでできているのを見て、このお店は必ず何かあるに違いないと確信しました。

おばさんが入口の横で調理しながら注文を取る
一度にたくさんの鍋を掛けられる特注のガス台

 それを確かめるために、ある日、日本人の友人と一緒に訪ねて見ることにしました。
 店外の行列に加わって待つことになりましたが、順番が近づいてくるとお店の中に入ることができます。お店に入るとすぐ横に大きいガス台があって、その前に陣取っているおばさんに注文を告げると、お客さんが席に座る前に鍋がガス台に載せらます。

店内は木製のイス・テーブル。壁は土の色

 名前にふさわしく、お店の中も木材と土の色を使っており、香ばしい味噌とキムチの香りやチゲが沸く音とよく似合っています。

メニューは4種類のみ。日本語の表記もある

 メニューは、テンジャンチゲ(味噌チゲ)、ウロンテンジャンチゲ(タニシが入った味噌チゲ)、スンドゥブチゲ(豆腐のチゲ)、キムチチゲの四つだけです。

 席に座るとすぐにご飯とバンチャンが並び、2,3分後には注文したウロンテンジャンチゲが出てきてその素早さにびっくりしました。夜は飲み会が主なので、やはり昼がこのお店の勝負時のようで、回転数を上げるためのシステムがとても良くできていることに感心しました。お客さんもそこら辺りは心得たもので、黙々と食べて、終わるとぱっと席を立ちます。もう少しゆっくり食べたいと思う方はお昼のピークを少し外して行くことをお奨めします。

狭い店内でみんな黙々と食べる

 ご飯が入っているボウルは、普通の味噌チゲ定食に較べるととても大きく、芳ばしいゴマ油の香りがします。よく見るとご飯の下に茹で豆モヤシが敷かれているのです。隣のテールをちらっと覗くと、皆さんご飯を一生懸命に混ぜています。

コチュジャンと青唐辛子
ナムル
大根の葉のキムチ
大根の千切りキムチ

 そういえば、バンチャンの大根の葉のキムチと大根の千切りキムチ、ナムル、そしてテーブルの上に置かれているコチュジャン、未だ沸騰している鍋の中の半熟卵(家では目玉焼きをよく使います)と、すべてが家庭でビビンバを食べる時に使う定番の具なのです。これらがビビンバの具ということに一つずつ気づいて行くうちに新しい楽しみを見付けました。チゲを頼んでビビンバも同時に楽しめるなんてまさに一石二鳥ですね。

大きなボウルの中にバンチャンとコチジャンを加える
半熟卵とチゲを加えてよく混ぜる
チゲも美味しい

 ということで、ボウルの中にバンチャンとコチュジャンと半熟卵を入れます。それだけではなく、味噌チゲとその中に入っている豆腐やズッキーニ、タニシなどを少し入れることで、コチュジャンだけでは出せない深さを味わうことができます。
 そして、水分を添加することにより、のど通しもスムーズになるし、半熟卵はすべての材料を一つにし、味をなめらかにしてくれます。韓国料理に欠かせないゴマ油も味と香りをもっと豊かにしてくれます。
 チゲに使われている味噌の味は濃いのですが、決してしょっぱくはなく、シンプルでありながらタニシの味が利いており、いつも食べたかった味で本当に嬉しかったです。

 最近、外食産業が経営するビビンバのチェーン店が増えて、様々な種類のビビンバが登場し、これはこれで味も良いのですが、家庭的で食べ慣れたビビンバはこのようなお店でしか味わえなくなったのかも知れません。

 韓国人にとって、味噌チゲとキムチチゲは毎日食べても飽きないたべものですので、こういう良いお店に毎日来られるこの辺の人たちは幸せだなと思いました。
 今度はこのお店のキムチチゲとそのビビンバに挑戦してみます。



 掲載したお店の情報 ※情報は掲載時のものです
 店  名 トゥッペギチブ뚝배기집)
 住  所 ソウル市鍾路区貫鉄洞5-1
서울시 종로구 관철동 5-1
 営業時間 月〜土 7:00~21:30
日   10:00〜21:30
 定  休 旧正月・秋夕(チュソク)
 電話番号 02-2265-5744
 予約方法
 アクセス 地下鉄1号線・3号線-鍾路3街駅-15番出口から徒歩7分
 ホームページ
 備  考


トゥッペギチブ(뚝배기집)の地図


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2013年3月8日金曜日

タッハンマリ(닭 한마리)


 今年の冬は韓国の最低気温がロシアより低い日もあり、いつもとは違ってロシアで暮らしている知人が心配してくれるほど厳しい寒さが続きました。
 旧正月の前にも大雪が降り、氷点下の気温が続いていましたので、帰省の道中が気になったほどです。

 とはいえ、寒い季節は温かい鍋を美味しく食べられる時期でもあります。
 そんなわけで、今回は「タッハンマリ」という鍋料理をご紹介しましょう。
 この料理の名前は「タッ=鶏・ハン=1・マリ=羽」、日本語に直訳すると「鶏一羽」となります(笑)。
 もともとは別の名前があったそうですが、一つしかメニューがないお店であえてその名を呼ぶ必要もなく、鶏の数を言うだけで注文が可能だったことから、「タッハンマリ」と注文するようになり、それがそのまま料理の名前になったのだということです。

※ちなみに、2羽注文する時は「タッハンマリを二つ」ではなくて、「タッドゥマリ」といいます(タッ・ドゥ=2・マリ)。


タッハンマリ通り。専門店が建ち並ぶ
どのお店もお客さんで一杯でした

 総合市場でありながら韓国で最大の衣料品市場でもある東大門市場の中にタッハンマリ通りという通りがあり、細く入り組んだ路地の中に見える7、8店舗がすべて「タッハンマリ」の専門店です。どの店にも「元祖」と書いてあり、人々で溢れ返っていました。どこに入るか少し迷いましたが、あえて一番奥にある「陳元祖補身鶏」というお店に入ってみました。

陳元祖補身鶏の店頭
陳元祖補身鶏の店内。ここもギッシリでした

 お約束通り(笑)タッハンマリを頼みました。
 あらかじめ下煮してある鶏一羽とジャガイモ、ネギ、エノキが入った鍋をテーブルのコンロに乗せ15分ほど煮ます。
 その間に酢と唐辛子粉入りとマスタードソース入りの2種類のタレを作っておきます。 調味料はすべてテーブルに置かれているので、好みに合わせて自由に作ることができます。
 鍋が沸騰し始めるとおばさんが鶏肉をハサミで食べやすく切ってくれるのですが、ハサミの使い方が非常に上手で、鶏一羽丸ごとがいつの間にか食べ易くカットされていました。

タッハンマリのお値段は18,000ウォン(2人前見当)
テーブルに並んだ調味料
ハサミで切り分けてくれます

 鶏ガラをベースにした濃いスープですが、ネギとニンニクの良い香りがして、脂っこさがなく後味もすっきりとしています。そのまま食べても勿論おいしいのですが、辛さで冷えた体を温めたいという向きには唐辛子のヤンニョムを入れてピリ辛にするのも良いでしょう。個人的にはおかずに出てくるキムチを一緒に煮てスープに酸味を加えるのが好きです。

用意したタレにつけていただきます

 韓国では昔から鶏を丸ごと食べることがポシン(補身)つまり健康に良いとされ、疲れを感じ易い時に元気をつけるために良く食べます。ところが、この店ではスープを作るときに5種類の漢方を入れるのでさらにヘルシー度がアップ! このお店だけの独特な作り方で特許まで取得したとおばさんがとても誇りを持って話していました。追加でナツメと高麗人参を入れるのもおすすめだそうです。

おばさんが手にしているのが特許の証明書
日本語のメニューもあります

 鮮度の良い若鶏だけを使うので、肉は非常に柔らかいながらも適度な歯ごたえがきちんと残っています。これをあらかじめ作っておいた2種類のタレをつけて食べます。
 若鶏なのでそれほどボリュームがなく、三人で一羽だとややもの足りないのですが、その分、うどんやトックポック(もち)を残ったスープに入れて食べます。それでも満足できなければご飯を入れて雑炊にして食べられます。スープの味が良いので、何を入れても美味しいのです。

うどんを入れて食べました

 お酒を飲む向きには、鶏肉はおつまみになり、うどんなどが食事になるので、一つの鍋でコース料理を楽しめることになります。
 また、タッハンマリはアレンジする人によってガラッと味が変わるので、同じ店でも一緒に行く人によって毎回違うタッハンマリに会うことになるでしょう。



 掲載したお店の情報 ※情報は掲載時のものです
 店  名 陳元祖補身鶏(진원조보신닭)
 住  所 ソウル特別市鍾路区鍾路5街265-18,19
서울특별시 종로구 종로5가 265-18,19
 営業時間 10:00~24:00(ラストオーダー 23:00)
 定  休 旧正月・秋夕(チュソク)
 電話番号 02-2272-2722
 予約方法 電話のみ
 アクセス 地下鉄4号線-東大門駅-9番出口から徒歩5分
地下鉄1号線-鍾路5街駅-5番出口から徒歩5分
 ホームページ www.wonjodak.com
 備  考


陳元祖補身鶏(진원조보신닭)の地図


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